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さて、クラウド会計ソフトのツートップと言えば、
「マネーフォワードクラウド」と「f社」です。
しかし私は「f社」推しは数年前にやめました。
その理由です。
ですが、まず、その理由の前に、
会計についての理解が必要です。
会計は複式簿記が土台となっています。
そしてこれは世界共通です。
貸借対照表・損益計算書は複式簿記を土台に作成される資料です。
複式簿記なくして、現在の財務諸表は作れません。
しかし、「f社」の会計ソフトは、
「会計を知らなくてもできる」をうたっています。
本当は貸借対照表・損益計算書は複式簿記の土台なくして作れないのに。
f社が実際にどうやってそれを実現しようとしているかいうと、
複式簿記の視点をちょっと変えて、
会計を知らない人にもしやすいような入力方法に変えたのです。
「複式簿記っぽいけど複式簿記じゃないデータ処理」に変えたのです。
f社は、この見た目のよさ・使いやすいと思わせるやり方によって支持を得ました。
また、請求書ソフトとの連携や会社設立などのバックオフィスも充実させました。
そして大規模な広告宣伝を行い、ユーザー数を爆発的に増やしました。
で、ここからは税理士事務所の話です。
税理士事務所にとって、f社会計ソフトの最大のネックは、
「複式簿記っぽいけど複式簿記じゃないデータ処理」です。
繰り返しますが、貸借対照表・損益計算書は複式簿記の土台なくして作れません。
「複式簿記っぽいけど複式簿記じゃないデータ」を
複式簿記に変換させないと、貸借対照表・損益計算書は作れないのです。
「複式簿記っぽいけど複式簿記じゃないデータ」
これが税理士事務所にとって最大の障壁です。
このデータを「複式簿記」に脳内変換させること、
この作業は今までやる必要がなかった処理です。
この作業をやらないといけなくなったのです。
そんなデメリットがあるとはいえ、
f社の目指すところは共感するところがありました。
金融機関とのデータ連携、
どこでも閲覧・編集ができるクラウド化、
請求書等のバックオフィス省力化、
税理士側も「税理士側がf社に慣れる必要がある」と
思わせるような素晴らしい理念でした。
しかし!
残念なことに、非常に使いづらい!
「複式簿記っぽいけど複式簿記じゃないデータ」を
複式簿記に変換しないと貸借対照表・損益計算書を作れないのに、
その作業が非常に難しい!面倒くさい!
でも最終ユーザーの利便性を考えると、
ここは税理士側が下りないといけない、
そう考えていました。
しかし、非常に使いづらい!
明らかに作業効率が落ちます。
他のお客様だとかからない手間が、f社のお客様にかかる!
事務所運営にとっても、これ以上、f社が増えるとまずい!
という状況になりました。
例えば、f社以外のソフトなら3時間で済むところが、
f社ソフトを使うと4時間かかるとか。
また、f社独特の世界観に頭の切り替えをするのに時間がかかり、
今度はf社以外のソフトに戻るときまた頭を切り替えたり。
時計だけでは測れないロスもあります。
目に見えにくいけれども、
確実にボディブローのように効いてくるロスがあるのです。
当然、それはコストアップにもつながります。
そこで、f社に要望を出しました。
「とにかく使いづらい!」
「税理士に馴染めるインターフェイスがほしい!」
「開発を税理士の使いやすさにもっと向けてほしい!」
おそらく、私だけでなく、多くの税理士がこの要望を出したはず。
しかしその後、f社がとった行動はというと、
「会計ソフト〇リー!!」と叫んで
スカイダイビングをする広告を代表とした大規模な広告宣伝です。
「ふ~ん、そっちにお金を使うんですね。」
税理士側の要望を無視して、
ひたすらユーザー拡大を目指す経営方針に見えました。
そして、f社を敬遠するようになりました。
このままの状態で、これ以上f社のお客様が増えると、
事務所の運営が成り立たなくなるからです。
それからはどんどんマネーフォワードクラウドに移行しました。
マネーフォワードクラウドは税理士側に立ってくれています。
個別の作業がないことはないですが、気にするほどではありません。
とにかく、
一番の問題は、
「税理士側の利便性に対するf社の配慮が不足していたこと」です。
これが一番大きい。
残念なことです。
f社のお客様の利便性を追求する経営姿勢は素晴らしいです。
これは素直に認めます。
しかし、その姿勢をもう少し税理士にも持ってほしかった。
すでにf社の新規顧客をとらなくなって数年経ちます。
未だにf社ソフトが税理士に敬遠されているところを見ると、
まだ税理士側への改善はされていないように思えます。
総括、
会計を知らなくてもできる会計ソフトなんだから、
税理士に頼らないでやってやろう!
という方は、f社がおすすめです。
税理士と二人三脚でやっていきたい!
という方は、f社ですと、
税理士を探すのに苦労するかもしれません。
私も、まだ「f社と協力してやっていこう!」という思いには至りません。
あしからずご容赦ください。
※追伸
他の税理士さんのブログで読んだ昔の出来事です。
f社は法人税申告ソフトも提供していますが、
法人税申告ソフトを提供し始めたばかりの頃、
そのプログラムの中の自動計算のところが間違っていたそうで、
スタッフが強制入力で訂正した、との話でした。
これは残念ながら、決定的な欠陥です。
今は当然修正されているはずですが、
こんな状態で製品を一般公開してはいけません。
当時は十分なテストができていなかったのでしょうか。
税理士側としては、こんなことで賠償リスクを
背負わされてはたまったもんじゃありません。
信頼をなくすには十分な出来事でした。