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「土地の評価しなおし屋」の行動経済学

野々市・金沢・白山市を中心に活動している「かわした税理士のブログ」へようこそ!

「土地の評価しなおし屋」が都会から北陸に入ってきているようです。

ちなみに「土地の評価しなおし屋」は私の造語です。

この方たちは、行動経済学を巧みに利用しています。

そのお話をしたいと思います。

Contents

「土地の評価しなおし屋」とは?

「土地の評価しなおし屋」は私が考えた造語です。

どんな方たちかというと、

「相続税を払い過ぎていませんか?」と相続税申告済みの人に近づいてきて、

「ここをこういうふうに計算しなおしたら、相続税が戻りますよ。」

といって、申告のしなおし(専門用語で「更正の請求」といいます。)をします。

そして、相続税が戻ってきたら、成功報酬でその何%かをもらう、

というご商売をされている税理士また税理士法人の方々です。

普通に考えると「元の税理士は何をしていたんだ!」となりますよね。

そこが、彼らのつけいるスキなんです。

土地の計算方法(評価方法)

まず、土地の計算方法(専門用語で「評価方法」)を押さえておきましょう。

土地の評価は「財産評価通達」を使って計算することがほとんどです。

でも、世界中で全く条件が同じ土地なんてないですよね。

場所が違う、利用方法が違う、周りの環境が違う、

それを単純な計算方法に当てはめようとすることが、そもそも無理なんです。

そこが大前提です。

元の税理士の考え方

土地の評価方法は一律ではありません。

つまり、グレーゾンだらけなんです。

そこで、「安く評価しても税務署が認めてくれるのでは?」

という土地があり、その確率が10%だったとしましょう。

このとき、元の税理士はどう考えるか?

もしその10%に賭けて、安い評価で土地の計算をして、

相続税申告をしたら、どうなるでしょう?

10%の確率で、その申告は認めてもらえるでしょう。

(申告税額が100万円だとします。)

しかし、90%の確率で、申告の内容が認めてもらえないでしょう。

(税額が180万円とします。)

となると、もし「認めてもらえなかったら?」と元の税理士は考えます。

お客様は「100万円だったのが180万円に増えた!」と思うでしょうね。

でも、最初から180万円だったら「そのまま180万円か」となるでしょう。

そして、100万円が180万円になる可能性は90%です。

あなたが元の税理士なら、100万円で申告しますか?それとも180万円?

180万円という安全策をとる税理士は多いのではないでしょうか。

「土地の評価しなおし屋」の考え方

「土地の評価しなおし屋」が入ってくる案件は、上記の180万円の案件です。

そこに「相続税を払い過ぎていませんか?」と入ってくるわけです。

税務署が認める確率は10%のままです。

「土地の評価しなおし屋」の考え方はこうです。

もし10%の確率が認められたら、こうお客様に言うでしょう。

「よかったですね!成功報酬はいくらいくらです。」

もし90%の確率のとおり認められなかったら、こう言うでしょう。

「残念ですね、でも税額は元のままで増えていませんよ。」

お客様はどう思うでしょう?

アンカリング効果がはたらくのです。

そしてここで注目するのが、

行動経済学でいう「アンカリング効果」です。

「アンカリング効果」とは、

元の金額がいくらだったかによって、

その後の金額の印象が変わる、

という効果を言います。

これをそれぞれの税理士にあてはめると

元の税理士からすると、

グレーゾーンでチャレンジすると、

10%の確率:100万円→100万円(金額が変わらないので普通の気持ち)

90%の確率:100万円→180万円(税額が増えて悪印象)

「アンカリング効果」がはたらき、悪印象が残る確率が大なわけです。

グレーゾーンのチャレンジをしなければ、

100%の確率:180万円→180万円(金額が変わらないので普通の気持ち)

でとどまれるのです。

元の税理士からすると、チャレンジをするモチベーションが上がりにくい、

というの現実的な問題です。

「土地の評価しなおし屋」からすると、

10%の確率:180万円→100万円(金額が減って好印象!)

90%の確率:180万円→180万円(金額が変わらないので普通の気持ち)

「アンカリング効果」の考え方では、悪印象が残る確率はゼロです。

「土地の評価しなおし屋」は悪印象が残るリスクはないのです。

まとめ

このように、元の税理士と「土地の評価しなおし屋」とでは、

「アンカリング効果」のはたらきによって、

置かれた条件が全く違ってくるのです。

悩ましい問題です。

さらに、もっと問題なのが、

税額の追加が出たら「加算税」がかかり、実害も出ます。

逆に税金を返してもらったら「還付加算金」で利息がついて戻ってきます。

実利も出てきます。

この構図が変わらない限り、

「土地の評価しなおし屋」がいなくなることはないでしょう。

元の税理士からすると、たまったもんじゃない、

というのが正直なところですね。

税理士業界の問題はあるにしても、

「土地の評価しなおし屋」は「アンカリング効果」を利用した巧みな商売です。

商売上手なところは素直に認めるしかないようです。

かといって私自身が「土地の評価しなおし屋」をするかというと難しいですね。

この狭い地方では、元の税理士と波風を立てることは死活問題です。

これはやはり、都会のドライな税理士だからできることでしょう。

これ以上の見解は控えさせていただきます。

以上です。

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