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個人事業で事業を始め、そのうち課題としてあがってくるもの。
それは「法人成り」ですね。
「法人」にするのには、いろいろと理由があります。
今回は「節約(節税)」だけに焦点を当てて考えてみます。
Contents
法人にすると節税になる?
まず聞いたことがあると思います。
「法人にすると税金が減る。」
これはその通りでしょうね。ある意味では。
例えば、所得税の税率が30%に近づくと、
法人成りを意識することが増えるのかなと思います。
このとき、所得税率で20%+住民税で10%+事業税、がかかっているでしょう。
となると、合計で少なくとも30%の負担になっていると思われます。
それに対して、法人税率はどうかというと、
中小企業の場合、所得が800万円までなら、
国税・地方税あわせて22~23%+住民税均等割、です。
ということは、差引すると、7~8%は法人の方が負担が減ることになります。
なので、「法人にすると税金が減る。」は間違いではありません。
あくまで、ある意味では。
法人から個人へ給料を出すことを忘れちゃいけない。
しかし、ここで忘れているのが、「法人から個人へ給料を出す」ということです。
利益を全て法人にプールするのなら、上記の税率で完結です。
ハッピーエンド、チャンチャンです。
でも、そんなことないですよね。
法人から個人へ給料(役員報酬)を出さないと、生活できないですよね。
法人に残ったものは、あくまで法人のもの。
個人の生活費は個人から出さなければなりません。
なので、法人から個人へ役員報酬という給料を出さなければ、
個人は生活費をまかなえないというわけです。
そして、個人へ役員報酬を払ったとき、いろんな負担が出てくるんですね。
役員報酬にはもちろん所得税・住民税がかかる。
役員報酬にはもちろん所得税・住民税がかかります。
税金が発生するんです。
このとき、「給与所得控除」という、いわゆる概算経費的なものがあるので、
役員報酬全額にかかるわけではありません。
これが「節税」と言われるものの一つの理由になっています。
しかし、税金はかからないわけではないんです。
概算経費を引いたものは税金がしっかりかかります。
上記の例では、個人のときと法人のときの税率で7~8%とあげましたが、
この際の役員報酬に対する所得税を考慮すると、
その差額はチャラになるかもしれません。
個人の所得が少ないうちは、税率の差額を活かせないので、
法人にするメリットはあまりないんですね。
所得が増えれば、そのメリットは大きくなってきます。
別の大きな問題は、社会保険料の負担が出てくること。
そして、別の大きな問題は、社会保険料です。
法人から個人へ役員報酬を払うとき、社会保険料が発生するのです。
個人負担で約15%・法人負担で約15%、合計30%弱の負担が発生します。
ビックリしませんか?
7~8%の税率の差の話をしていたのに、
突然30%の負担増の話になりました。
社会保険料の負担はとんでもなくビックリするものです。
これを抜きに「法人成り」は考えられません。
実際には、個人で負担していた国民健康保険・国民年金がなくなるので、
そちらとの比較になってきます。
すぐに30%増ではありません。
今負担している国民健康保険・国民年金との比較が必要です。
社会保険の負担がどれだけ増えるのか?
これは大きな問題です。
こちらは税金とは逆で、所得が増えれば増えるほど、
社会保険料の負担も増えてきます。
税金は減っても、社会保険料は増える、
トレードオフの関係と言ってもいいでしょう。
単純に比較できないんですね。
よく「個人と法人とどっちが節約できますか?」と聞かれますが、
今まで説明したとおり、単純には比較できません。
現状の税率、社会保険の負担などちゃんと比較計算が必要です。
「いくらから法人にすればいい?」というのも難しい質問です。
税金や社会保険は、単純に「いくら」で決まっているわけでありません。
家族構成や他の要素も絡んできているので、
本当はとても複雑なシミュレーションをしないと分からないんですね。
細かいシミュレーションは税理士に相談を。
単純には計算できないので、税理士に相談するのが一番です。
そのとき必要なのは、確定申告書の数字だけではありません。
誰を役員にすればいいか、なども考慮に入れるので、
家族構成や家族の収入の状況も比較検討に必要な要素になります。
あれやこれや、いろんな要素を踏まえて考えて、
節約になるかどうかを検討しましょう。
最後に、「法人成り」の目的は「節約」だけではない。
今回は「節約(節税)」に絞ってお話をしました。
しかし、本来「法人成り」の目的は「節約(節税)」だけではありません。
法人にすることによる社会的信頼性の向上、
厚生年金加入による社会保障の充実、
入札など事業運営に必要な条件を満たすため、
など、いろんな理由が考えられます。
ときによっては、法人にすると明らかに負担が増えるけど、
あえて法人にした方が将来性が出てくる、
といったケースも考えられます。
そこらへんの話はいつかまたしたいと思います。
「法人成り」するかどうかは、そう単純ではない、ということです。